EXPOST VOL.2
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4 ドバイ万博の会場で世界中の子供の笑顔をプリントした傘を広げる「メリープロジェクト」のメンバーら。藤井さんと中本篤宏さんも参加した(メリープロジェクト提供。同プロジェクトについては3面参照)立ったり、寝転んだり思い思いのスタイルで眺めていた。ロシアによるウクライナ進攻直後の3月に訪れたときは、ウクライナ館の壁一面に各国の入館者が平和を願うメッセージが貼り付けられていた。もう一人の神戸市の会社員、二神敦さん(50)は「ガーデン・イン・ザ・スカイ」が良かったという。庭園のように樹木が植えられた展望台が地上から回転しながらゆっくり上昇する高さ55メートルの展望タワー。「このタワーに登ると、会場全体を見渡せるのはもちろん、砂漠の中に人工的な作られた都市であることがよく分かるんです」2月にドバイ万博を訪れた際、二神さんはガーデン・イン・ザ・スカイに登るのを最後の楽しみに取っておいたが、2 週間にわたる滞在期間の最終日に会場に行くとタワーはメンテンナンスのため動いていなかった。このこともあって閉幕直前の3月に再び、ドバイを訪問したという。二神さんも、これまでに訪れた博覧会が国内の地方博を含め150 近いという万博マニア。「『ネットでなんでも分かる時代に、お前の趣味はもう古い』とよく知人に言われます。でも、リアルに人と出会えるのは万博ならではの良さ。これはネットではできないことです」ドバイで二神さんはフランスの万博マニアと再会することができた。SNSで知り合い、ドバイの一つ前に開かれたミラノ万博で初めて会った50 代の男性だ。この人は、大阪・関西万博の開催が決まると、会場予定地を見たいとわざわざ大阪までやってきたという。二神さんには、こうした知人が海外に10 数人いるという。実は藤井さんと二神さんは知り合いで、3月にドバイを訪れた際に現地で合流している。二人には、万博の会場で外国人とコミュニケーションを深めるため、必ずしていることがそれぞれある。藤井さんは帽子とベストに過去に訪れた万博の記念バッジや日本らしいバッジをたくさん付けていく。すると、同じような海外の万博マニアから「いいバッジだね。交換しない?」と声をかけられる。二神さんは浴衣を着て入場することにしており、「前にも万博で会ったね。覚えているよ」と呼び止められるという。国境や民族、宗教、言葉の壁を越えた人類の祭典・万博。それを象徴するグッズがドバイの会場内で販売されていた。パビリオンで記念スタンプを押してもらうスタンプ帳だ。黄色い表紙にアラビア語と英語で「パスポート」と印刷されていた。会場内を回ると世界旅行が体験できるパスポートというわけだ。会期中盤、100 個以上スタンプを集めると白い表紙の特製品をもらえることになり、売店でもっとも売れたグッズだといわれる。3 年後には、その万博が再び大阪にやってくる。藤井さんは「コロナが治昨年10月から今年 3月までアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれたドバイ万博(EXPO2020)。新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期し、開幕後も海外客が伸び悩んだものの、最終的に約 2410万人が来場した。中東初の万国博は日本人の目にどう映ったのか。現地を訪れた2人の万博マニアに話を聞いた。「大阪万博が歴代1位、上海万博が2 位だとすると、ドバイ万博は3 位でした」。そう評価するのは大阪市の藤井秀雄さん(64)だ。小学 6 年生の時、1970 年の大阪万博を見たのをきっかけに博覧会のとりこになり、以来、訪れた内外の博覧会は30を超える。ドバイ万博には今年2月初めと3月末の2 回、それぞれ1 週間訪問し、220あるパビリオンをすべて回った。大手電機メーカーを定年退職後、関連会社に勤めていたが、1回目は新型コロナの水際対策で海外からの帰国者は自宅などで 7日間待機しなければならない時期だったため、仕事をやめてまでドバイに行ったという筋金入りのマニアだ。「大阪や上海は未来を予感させる万博だったが、ドバイには斬新なものはあまりありませんでした」。それでも3位にあげるのは「国の境のない未来を感じさせる」万博だったからだ。海外からの参加国数でみるとドバイは192か 国と、2010 年 の上 海 の190を抜いて過去最多の万博だった。ちなみに1970 年の大 阪は76、2005 年の愛知は120。大阪・関西万博は現時点で142、目標は150か国だ。財政的に厳しい参加国のため、大阪・関西を含め共同館を設ける万博は多いが、ドバイではすべての参加国が単独のパビリオンを出展していた。「ドバイが多国籍国家ということもあるかもしれませんが、いろいろな国の人が自然に交じり合い、これこそあるべき世界だと考えさせられました」それを象徴していたのは、会場の中央にあり、開会式などが行われた「アルワスルドーム」。高さ67.5メートル、直径130メートルの格 子状ドームで、格子の間にパネルがはめ込まれ、全体が世界最大級のスクリーンになっている。ドームの内側にプロジェクションマッピングでさまざまな映像が映し出され、世界中から集まった人たちがNov.2022 VOL.02「国の境ない未来」感じたドバイ博2人の万博マニアに聞く

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