4 Apr.2024 VOL.05 →1面から続くここからは万博マニアの中本篤宏さんに加わっていただき、ロングさんとともに海外パビリオンを個別に見てみた。■サウンジアラビア館大小10を超える伝統的なれんが造り風の建物が立ち並ぶパビリオンは、中東の伝統的な市場「スーク」を再現したものだ。来館者は入り組んだ路地を歩きながらサウジアラビアの様々な文化に触れることができる。昨年11月の発表会でアルマズヤッド・オスマン政府代表は「伝統的な料理や音楽、人々との交流を通じてサウジアラビアを五感で感じてもらいたい」と語った。「商人(あきんど)の町・大阪とサウジアラビアの共通点として、市場をイメージしたデザインになったようです。アラビア書道で描いた同国の地図と日本語の『サウジ』を組み合わせたエンブレムにも、日本文化へのリスペクトを感じます」(ロングさん)「サウジアラビアは最近、観光客誘致に積極的です。それは、3月まで開かれていたドーハ花博のパビリオンでも感じました。次回の2030年万博がサウジの首都リヤドで開催されることが決まり、大阪でもかなり期待できると思います」(中本さん)1月31日に起工式が行われた。■アメリカ館通路を挟んで向かい合う2棟の三角形の建物と、その間に吊り下げた巨大なキューブで構成されるパビリオンで、日本の「わび・さび」から着想を得たという。建物壁面の大型LEDディスプレーに米国の名所などの映像が映し出され、渓谷のような空間を作り出す。キューブの下をくぐり抜けると、開放感あふれる中庭が現れる。テーマは「共に創出できることを想像しよう」。来館者は映像や音楽を通して「アメリカ探検」をしながドイツ館のマスコット「サーキュラーズ」(©MIR_LAVA_facts and fiction)日に起工式が行われた。スイスは昨年9月、大阪市北区に領事館を開設するなど、万博を機に日本や関西地域との経済・技術交流にも力を入れようとしている。■フランス館カーテンで覆われた劇場の舞台のようなデザインが特徴で、来館者は正面の螺旋階段を上って入館。屋上にフランスの多様な自然を紹介する約1000㎡の庭園が設けられる。テーマは「愛の讃歌」。運命の赤い糸を通じて「自分への愛」「他者への愛」「自然への愛」といった様々な愛に導かれる未来のビジョンを提案するという。「ルイ・ヴィトンやディオールが展示に携わっていますから人気を集めそうです。自然との共生を題材にした、宮崎駿監督の『もののけ姫』の一場面を再現したタペストリーも展示されます」(ロングさん)「ドバイ万博のフランス館はビジネス用のスペースが多く、来館者の評判は良くなかった。その反省もあってかフランス政府関係者は『大阪はドバイとは違う』と語っていると聞きました(笑)」(中本さん)■英国館コンセプトは「ともに未来を築こう」。積み木をイメージしたパビリオンは、小さなアイデアの集まりが世界を変えるイノべーションを実現できることを表している。建物は万博終了後も全世界のイベントなどで再利用できるようモジュール構造を採用。2012年ロンドン五輪や20年東京五輪で使われた素材の一部を使う。館内では、その場にいるような没入型の展示で英国の風景や歴史、未来を知ることができるという。「英国は伝統的に外観重視で、上海でもミラノでもドバイ万博でも素晴らしいパビリオンでした。それに比べると、今回は期待していたものと違いました」(中本さん)ら、米国が進める宇宙探査や教育などの取り組みを学ぶことができる。「1970年大阪万博のアメリカ館は『月の石』で行列ができましたが、最近の万博では見本市のような面白くない展示が続いていました。しかし、ドバイ万博では宇宙開発などをテーマにして評価が高かった。大阪でも力を入れそうです」(中本さん)「詳細は分かりませんが、ラーム・エマニュエル駐日大使は『再び月や他の銀河を目指す宇宙探査に参加する姿を想像できるような展示』を提供するとしています。中庭のステージで繰り広げられるパフォーマンスも楽しみです」(ロングさん)着工は今春だが、「(開幕)初日に間に合う」(担当者)と自信をみせる。■ドイツ館タイトルは「わ!ドイツ」。循環経済の「輪」、自然と技術の調和を表す「和」、そして「わ!」と思わず感嘆の声があがるような展示を表しているという。7つの円形の木造建物を配置し、循環型社会の暮らしを体験できるパビリオンを目指している。「真面目な展示だが、最後にちょっとした演出があるのがこれまでのドイツ館の特徴。ドバイ万博でもサステナブル(持続可能)な未来について学んだあと、最後にブランコに乗ってみんなで卒業式を迎えるという場面がありました。大阪ではどんな演出がされるでしょうか」(中本さん)「妖精をイメージしたマスコットキャラクター『サーキュラーズ』の人形が音声ガイドとして来館者に貸し出されます。このキャラクターも日本の『カワイイ文化』にインスピレーションされたようです」(ロングさん)■スイス館風船のような、二重の空気膜で覆われた5つの球体で構成される。重量は5つあわせて約450kgで、「これまでで最も軽い」パビリオンになるという。球体を覆うように藤などのツル科の植物が植えられ、屋上に「ハイジのバー」が設けられる。「日本でスイスといえば、やはり『アルプスの少女ハイジ』。大阪湾を望む屋上のバーはハイジが出迎えてくれるそうです。ぜひ、行ってみたいですね」(ロングさん)「スイスは人の心をつかむパビリオンが得意です。大阪万博でも約3万2000個の電球を使った『光の木』と呼ばれるパビリオンで人気を集めました」(中本さん)テーマは「生命」「地球」「人間拡張(オーグメンテッド・ヒューマン)」の3つ。3月19 「わび・さび」「カワイイ」で自国をPR?持続可能性にも配慮した海外パビリオン
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