4Oct.2024 VOL.06 ©Naomi Kawase/SUO, All Rights Reserved河瀨直美監督(右)を囲んで取材をする(左から)田井豊浩さん、石田愛さん、長谷川心愛さん=関西大学千里山キャンパス(同大広報アドバイザー・伊地知克介さん撮影)督、イチョウを伐らないことにしましょう」と、新しいプランを持ってきてくれたんです。想いを受け入れてくれたスタッフの心意気に感動して涙が溢れました。そして10月にこのイチョウを夢洲に移動します。石田愛さん パビリオンでは対話が行われ、来館者も参加するそうですね。河瀨さん ダイアローグシアターと名前についている通り、河瀨館には映画館を作ります。そこでスクリーンにとある誰かが姿を現し、観客代表にとある誰かとリアルタイムで対話をしてもらいます。もちろん脚本はありません。一期一会の対話です。対話者は海外の人の場合もあります。万博会期中、そんな対話を2000回ほど行う予定です。長谷川心愛さん なぜ対話ですか?河瀨さん ロシアとウクライナの戦争が続いており、パレスチナでも戦闘が起きている。人類がコロナウイルスという共通の敵に立ち向かったのに、その直後に人間同士が殺(あや)めあうことになった。何でこんなことが起きているのか。コロナで国【電力館 可能性のタマゴたち】小高悠暉さん(社会安全学部4年)黒木望未さん(法学部1年)寺田和真さん(法学部1年)藤田美紀さん(社会学部1年)境を閉鎖している間に「自分たちの国が正しい」というような思想が深まってしまったのか。それでも、違う考えの人を排除することではないはずです。嫌なことを言われたら腹が立つけど、ひと呼吸おいて「ああ言われたのは自分がこう言ったからか」と冷静に考えてみる。そうして暴力に訴えるのでなく、いい関係を構築できる方向に歩みを進められる。あなたの中に私がいます。私の中にもあなたがいます。丁寧に対話を繰り返し、命を脅かすことがないように、自分の中に他者を存在させてみる。そうすれば、戦争をなくせないだろうか。そう考えたのがきっかけですね。石田さん 対話者は一般から募集し、監督が自らレクチャーされるそうですね。河瀨さん 対話って相手の心模様を想像しながら言葉を発し、お互いの理解を深めあうこと。普通の会話より手間も時間もかかります。レクチャーというよりは、一緒に対話を繰り返してみる。そうして話者の中にあるものを私は引き出すだけです。それは河瀨映画の創り方に似ているかもしれません。長谷川さん テーマはあるんですか?河瀨さん はい。クリエイティブチームが考えています。答えのないテーマがいいんじゃないかな。例えば「あなたがこれまでの人生でついた最大の嘘は何ですか?」というような。答えのないテーマの方が対話がどこに向かうか分からず、見ていておもしろいと思います。田井さん 僕たちのような世代が対話でどんな影響を受けるか。興味があります。河瀨さん ロシアの人とウクライナの人が対話する回があってもいい。ロシア人にもいろいろな考えを持っている人がいるはずです。54年前の大阪万博で岡本太郎さんは「太陽の塔」というメッセージを残してくれましたが、私たちも今回の対話をアーカイブにして未来の人に届けます。50年後の人に恥じることのないようなメッセージを届けられるといいなと思います。河瀨館が対話者を募集中「Dialogue Theater −いのちのあかし−」は現在、対話者を募集している。万博会期中に1日1〜3回、計7日間以上出演できることなどが応募要件。出演場所は万博会場か東京会場のどちらかで、出演者は書類選考後、オーディションによって決まる。出 演 者には謝礼と交通費が支給される。詳細や申し込みは公式サイト(QRコード)。=関大万博部代表大阪・関西万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマを具体化するため、国内のトップランナー 8人が企画した「シグネチャーパビリオン」が会場中央に設けられる。パビリオンでどんなことが体験でき、プロデューサーのどんな思いが田井豊浩さん 監督がプロデューサーを務められる「Dialogue Theater −いのちのあかし−」は廃校となった小学校と中学校の木造校舎を移築して再利用したパビリオンです。中庭に移植されるイチョウの木は伐採される予定だったとお聞きしました。河瀨直美さん 移築した小学校の校舎横に植わっているイチョウで、跡地を更地にするため伐られる運命にありました。万博会場に持って行くことも考えたけど、■関西大学取材担当者【Dialogue Theater −いのちのあかし−】田井豊浩さん(総合情報学部3年) 長谷川心愛さん(経済学部3年)石田愛さん(社会学部1年)河瀨直美さん 生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続ける映画作家。1997年、劇場映画デビュー作「萌の朱雀」でカンヌ映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少受賞。2007年に「殯(もがり)の森」でカンヌ映画祭グランプリ(審査員特別大賞)に輝いた。2010年に「なら国際映画祭」を立ち上げ、後進の育成にも力を入れている。2020年東京五輪の公式映画総監督。込められているのか。「いのちを守る」をテーマとする河瀨直美さん(映画作家) と「いのちを拡(ひろ)げる」がテーマの石黒浩さん(大阪大学大学院教授・ロボット学者)に関大万博部の部員たちが聞いた。新幹線1両くらいの高さがあるのでリスクがある。仕方なく伐採されることを受け入れようとしていたある日の朝、目覚めた瞬間にイチョウが「伐らないで」と言っている様な気がしたんです。私は「いのちを守る」というテーマをいただいたのだから、このイチョウのいのちを守りたい。そうしてスタッフ・ミーティングで「何か方法はないの?」と訴えました。2023年11月に夢洲で河瀨館の地鎮祭をした時、ランドスケープ担当の造園家、齊藤太一君が「監【いのちの未来】西山美里さん(環境都市工学部3年)坂井一貴さん(社会安全学部1年)人はもっと理解しあえる映画作家 河瀨直美さん万博で対話を深め関大万博部がテーマ・プロ
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