6INTERVIEWOct.2024 VOL.06 Profile Jacek Tomczak 1973年、ポーランド・ポズナン生まれ。98年、同国で最も古い大学の一つであるアダム・ミツキェヴィチ大学の法学部卒業。ポズナン市議会議員などを経て2005年から共和国下院(セイム)議員。23年12月、投資・貿易庁の開発・技術副大臣(国務長官)に任命された。「日本人がポーランドと聞いて思い浮かべるのはショパンですよね。それで音楽のイベントをたくさん計画しています。館内のコンサートホールでは1日に3回、ピアノリサイタルを開きます。このほか、ポーランドから優れたミュージシャンやアーティストを呼んできて、万博会場内や大阪市内などでもダンスや民族舞踊、スポーツといった様々なイベントを開催します」−その数は1000近いそうですね。お薦めのイベントを教えていただけますか?「例えば、2025年5月3日の『ポーランド憲法記念日の祝賀』では国立民族合唱舞踊団『シロンスク』が来日公演します。ステージでは日本の舞踊団も加わり、伝統舞踊のポロネーズを披露します。ポーランドでは1791年5月3日に欧州初の憲法が制定されました。わが国の憲法記念日は日本と同じ日なのです。万博協会が主催する様々なテーマウィークにも積極的に参加します」−万博をきっかけに、日本との経済交流にも力を入れられていますね。「経済や貿易を担当する副大臣として、経済関係のイベントもお薦めしなければなりません。最も重要なのは5月20日の日本・−ポーランド館は参加国が自前で建設する「タイプA」のパビリオンですが、建設業者の選定が遅れていました。ようやく明日(8月8日)、起工式が行われます。今のお気持ちはどうですか?「ポーランド人には困難があっても、決してあきらめないという不屈の精神があります。正直に言いますと、初期の準備段階には様々な問題がありました。でも、あきらめずに頑張った結果、それを乗り越えることができました。今は安心しています」−どんな問題があったのですか?「ポーランドと日本は法律が異なり、日本には地震の問題もあります。このため、建設業者を見つけるのに時間がかかったわけです。しかし、私たちはパビリオンの当初のデザインをあきらめるつもりはありませんでした。ようやく6月に竣工期限と品質を保証してくれるコンソーシアム(共同事業体)と建設契約を結ぶことができました。開幕には間に合うと確信しています」−部材や外壁などを会場外で制作することで工事の効率化を図ると聞いています。どんなパビリオンになりますか?「パビリオンの面積は約1000平方メートル。建物は螺旋(らせん)状になっており、 ショパンのアニメ創造の遺伝子ポーランド館の完成予想図(©interplay+komy studio)ポーランド人の創造性と革新性が波のように世界に広がっていることを表しています。螺旋の中央にコンサートホールを設けます。ファサード(外壁)には『木組み工法』を使います。これはポーランドと日本の伝統建築をオマージュしたものです」−展示内容についても教えてください。「テーマは『ポーランド。未来を切り拓く遺産』で、わが国の文化の独自性や経済・科学の可能性、観光地としての魅力、そして何よりもポーランド人の創造力をお見せしたいと思います。専門家のチームが現在、急ピッチで展示の準備を進めています。詳細はまだ明らかにできませんが、一つだけ紹介すると先日、音楽家のフレデリック・ショパンを主人公にした短編アニメーションの撮影が始まりました。制作を担当するのはブレイクスルー・フィルムスです」−俳優が演じた実写映像をもとに油絵を描き、それをアニメーション化した「ゴッホ 最期の手紙」を手掛けたスタジオですね。アカデミー賞などにノミネートされ、注目されました。万博会期中、音楽などのイベントも数多く開かれます。ポーランド輸出フォーラムと9月30日の日本・ポーランド投資フォーラムです。このほか、様々なプログラムを用意し、医療・製薬、IT、農業・食品、ゲームといった分野でわが国の可能性を紹介します。ポーランド経済に対する認知度を高め、日本との経済協力を強化することを目指しています」−万博はオリンピックと並ぶ平和の祭典ですが、残念ながら世界では今も戦争や紛争が起きています。とくにポーランドは隣国・ウクライナがロシアの侵攻を受け、皆さんの危機感は強いと思います。こんな時代に万博を開く意味は何でしょうか?「万博は世界中の人が手を組んで、様々な問題の解決策を見つける場です。ウクライナが攻め込まれたのは前回のドバイ万博の開催中ですが、ポーランドはずっと隣国に手を差し伸べてきました。現在、約100万人のウクライナ人がポーランドに避難していますが、難民キャンプはなく、彼らは普通に働いたり、勉強したりして生活しています。その準備ができたことはポーランドの誇りです。われわれは歴史的に何度も戦争で苦しい目にあってきたので、困っている人々との連帯を重視しています。こうした価値観も万博を通じて世界の人々と共有したい。ポーランド人が脈々と受け継いできた『創造の遺伝子』が世界の予期せぬ変化にも柔軟に対応し、よりよい未来を創る力になることを発信していきます」−パビリオンの起工式にあわせて万博会場近くのビル壁面に芸術家アレクサンドラ・チュジャクさんがデザインした壁画(ミューラル)も制作されました。万博に本当に力を入れられていますね。「ポーランドと日本には特別な絆があると思います。両国は何十年間にもわたって経済や文化で協力してきました。とくに25年はポーランドと日本が戦略的パートナーシップを結んで10年目です。万博はそれをさらに深めるチャンスです。大阪でポーランドの存在感を示したいと考えています」(聞き手 EXPOST編集部)ポーランド館政府代表ヤツェク・トムチャクさん1000 近いイベント開き大阪で存在感を示す「
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